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MT法においては,自然の電磁場をソースとして 用い,周波数領域における電磁場応答関数(電場 -磁場間の振幅比,位相差)から地下の比抵抗( 電気の流れにくさ)構造を推定します. 良好な電磁場応答関数を推定する一つの方策として, remote reference法(下記1)の論文を参照ください) があります.ノイズの少ない(通常ターゲット地域 から遠く離れた)remote点において磁場水平2成分 を測定し,ターゲット地域の各観測点での電磁場か ら,remote点の電磁場(通常は磁場)に相関のある 成分のみを抽出することで,各観測点周辺のローカ ルなノイズの影響を除こうというものです. ノイズ環境が悪いと考えられる地域での観測が予定 されていたため,自前のremote reference点を持ち たいと考え,冬の積雪のことも考えて,福島県境に近い 茨城県常陸太田市(旧里美村)にノイズ状況の調査に に出かけました.その時,端的にremote点の必要性を 実感することがありましたのでご紹介します.. 1) Gamble, T. D., J. Clarke, and W. M. Goubau, Magnetotellurics with a remote magnetic reference, Geophysics, 44, 53?68, 1979.
ノイズ状況は,1日測定すればデータの質がほぼ判断 できるため,写真のように磁場コイルセンサーを埋めず, 簡単に両端を土で覆う程度で1晩データをとりました.
そうすると,プロット1のような時系列となりました. プロット1では,上から電場の南北,東西成分,磁場の 南北,東西成分の4つの成分を示しています.時系列を 見慣れている方にはすぐわかることなのですが,プロッ ト1では,灰色で覆った部分に磁場水平成分(下段2チャ ンネル)に顕著なピークが見られ,電場にはそれに対応 した変化が認められません. 通常,磁場のみに測定されるノイズとして,自動車 が近傍を走ることによるノイズや,立木のゆれノイ ズなどが考えられるのですが,現地は自動車道から かなり離れた場所であったうえ,伐採地でした.結局, 上述のように簡易な測定をしたため,コイルの上を小 動物が走り,センサーが揺れたことによって生じたノイ ズだと推定されました.ここでは,2048秒分のデータ のみを示していますが,それ以外の時間にも(特に夜 間に),頻繁に磁場のみに振動的な波形やパルスが 混入していました. この時系列を周波数解析すると,プロット2のような 探査曲線となります.これは, 電場南北成分-磁場東西成分間(緑), 電場東西成分-磁場南北成分間(赤)の周波数ごとの 振幅比(上段)と位相差(下段)を表示したものです. 周波数が小さい(右側)ほど地下深部の情報を示し, この探査曲線を逆解析することで地下の比抵抗構造が 推定されます.が,ご覧のように,1Hzから低周波の 応答関数が殆ど決まっていません(大きくとびがあっ たり誤差が大きい). 実は,このとき,先ほどの点から数km離れた点でも ノイズ調査のための観測を実施していて,そちらでは, 用いたコイルの長さが短かったこともあり,きちんとセ ンサーを埋めていました.こうして,その点での磁場デー タを用いたremote reference処理が可能で,処理 の結果,探査曲線はプロット2からプロット3のように 劇的に改善しました.こうして,現地が,1日の データ(それもあまり顕著なシグナルがない状況)で 良好な応答関数が決定できるremote reference 点にふさわしい地域であることが確認できたのですが, 同時に,remote点の必要性,さらには,テスト観測 といえどもコイルは埋めなければならないことを改めて 深く認識した次第です. ...ところが,実際は,この観測点では継続的な観測の 許可を得ることができず,その後,(永続的ではな いのですが)山形県大蔵村にremote reference点を 設置することになりました... 東大地震研究所、上嶋 誠記 |